2007年6月13日水曜日

資源戦争

長いので前半だけ

Resource Wars

資源戦争 - われわれは生き残れるのだろうか?

スティーブン レンドマン 200766


第二次世界大戦終戦間近、フランクリン・ルーズベルトはサウジアラビアのイブン・サウド国王と米海軍巡洋艦クインシー内で会談した。これがその後60年続く、国務省が「戦略上の力の強大な源泉であり世界史上最大級の実利」と呼ぶ、サウジアラビアを中心に広がる中東地域の石油利権をもたらす米国とサウジアラビアの関係の始まりであった。中東には世界の石油埋蔵量の3分の2(約6,750億バレル)があるといわれている。カスピ海盆地には2,700億ばれるの石油と世界の埋蔵量の8分の1に当たる天然ガスがあると推計されている。われわれがなぜ、現在対イラク、対アフガニスタンと戦争をしているのか、両国をコントロールしようとしている計画があるのか、がかなりの部分これで説明される。アメリカはこれらの地域に恒久的な軍事プレゼンスを持ちたいのだ。デモクラシーの名を借りてワシントンに忠義を誓う属国の傀儡政権を通じて、両地域のエネルギー資源をコントロールするために。彼らは失脚した前任者たちが帝国のルール、特に第1条:「アメリカがボスでアメリカが言った通りになる」というのに逆らっていたのを見ていた。


ブッシュ政権が「ボス」であることは明言されている。世界を力で統制しようとしていることが2002年の米国安全保障戦略(NSS)に書かれているし、その後2006年にはより強い表現に改正されている。NSSには他の国には認めないアメリカの新たな統治権が淡々と記されている。アメリカが支配者であり世界の指導者である状態に対して、挑んでくる恐れのある国や脅威に対し、予防的な戦争を遂行する権利があるのだ。戦略の鍵となるのは、ロシアと中国を除く中東から中央アジア地域で十分な軍事力を用い今のところは、自身で統制させることでこの地域に埋蔵されている莫大なエネルギー資源をコントロールすることだ。これらの資源を手に入れることで、どの国に資源を配分するかを決めることができるようになり、大手石油会社は莫大な利益を保証されるのだ。


イラクの新「炭化水素法」は、傀儡議会を通過すれば、イラクの宝である石油を強奪する恥知らずなスキームとなる。これは、外国投資家(主に米国と英国を意味する)に莫大な資源を割当て、イラク国内には銀貨1枚を残すような民営化の青写真だ。複雑な条項により、イラク国立石油会社は、国内で発見されている80の油田のうち17しか独占的にコントロールできず、また未だ発見されていない油田についてはすべて外国投資家の取り分となる。さらに悪いことに、大手石油会社はイラク国内への投資や、イラク国内企業との提携や、イラク人の雇用、労働組合の権利の尊重あるいは先端技術の共有など一切行う必要無しに利益を独占できるのだ。外国投資家は35年までの長期契約が与えられ、盗みを行うようなスキームでイラクの資源を奪っていくことになろう。


これが、1991年の湾岸戦争へと向かう道を定めたのだ。サダムが誰の脅威であったかなど関係なかった。この道は以降、途切れず続いている。2002年6月のブッシュの予防戦争ドクトリンは米国の意図を詳細に明かすものだった。その後9月には米国安全保障戦略(NSS)が発表され、われわれは中東と中央アジアおよび間接的に代理戦争の起こったソマリアなどに巻き込まれることになった。こうしてスーダンのようなアフリカの他の石油産出国は、アメリカの意思に従うか、さもなければ次のターゲットになるぞ、というメッセージを受け取った。


世界のエネルギー供給が有限であり、米国は大きく輸入に依存していて、石油産出量のピークが近いあるいは近づいている状況で、アメリカにとっての「安全保障」とは、自国で算出できない必需品を持続的に供給することを保証することだ。これには、資源を手に入れ、守り、自国への海上輸送ルートを防衛するために戦争を行うことも含まれる。つまり、エネルギーは侵略的な新世界秩序に基づくグローバリゼーション、軍国主義、戦争、エコロジー面での無謀さと結びついており、現在の過激な米国政権は世界を支配するために最終戦争を起こすリスクを取る用意があるのだ。この計画の中心には、まず必要な資源をどこにおいても、どんなにコストを払ってもコントロールすることであり、手始めに石油を選び、最も埋蔵量の多い中東と中央アジアに手を伸ばしているのだ。


新グレート・ゲームともたらされる危機


新たなグレート・ゲームが始まった。その規模は上述したように依然とは比べ物にならないほど大きい。前のグレート・ゲームはおよそ100年間、大英帝国と帝政ロシアの間で続いたが、問題は石油ではなかった。今回のゲームは米国がイスラエルや英国、西側諸国および日本や南朝鮮、台湾などの衛星国とともにロシアと中国に対するものだ。どちらの側も以前のものがおもちゃに思えるような現代の武器で武装している。掛かっているのは石油だけではない。地球上のすべての生物の存続が第1の問題だ。


資源と資源をめぐる戦争の意味するところは、軍国主義の台頭、平和の後退、などであるがもし誰かが注意を払えばこれに加えて、より本質的な地球が生命を維持する能力なのだ。アインシュタインの原子崩壊の過程の説明のように、ある点を越えると後戻りできなくなり、やり直しは効かなくなるため、これらが問題になるべきなのだ。アインシュタインの有名な言葉を借りると、「第3次世界大戦がどのような武器で戦われるかはわからないが、第4次世界大戦は棒と石で戦われるだろう」。


最悪シナリオを想定すれば状況はもっと悲惨だ。核によるホロコーストの後には、生命力の強い甲虫とバクテリア以外は死に絶え、新石器時代の到来はずっと先になるだろう。ただし、甲虫やバクテリアが生き残ればの話だが。


危機は現実的なものであり、196210月のキューバミサイル危機では実現一歩手前まで行ったのだ。回避できたのは奇跡だったことは、米国、ロシア、ホスト国のキューバが参加した200210月の40周年記念サミットで明かされた。そこで初めてわれわれは、核最終戦争突入にどれだけ近かったかを知らされた。核による破壊が回避されたのは、ケネディーの「隔離線」近辺でソビエトの潜水艦隊が米国駆逐艦の攻撃を受けた際に、ワシーリ アルヒーポフ艦長が一旦発した核魚雷発射命令を取り消したおかげにすぎない。もし実行していたら、地球はその後どうなっていたのだろうか、かなりの生物が生き残っていたのだろうか、われわれができるのは想像することだけだ。


今の問題に戻ろう。今回の問題は19ヶ月の任期を残した、略奪先を求めてうろつき、地球上のすべての生命を危険にさらす、ごろつきの政権だ。この政権は200112月の原子力政策レビューで、アメリカがそう言ったからという理由だけでアメリカの脅威とみなされる国に対して行う差別的な予防的戦争を通じて世界を統治するための「帝国主義的な基本戦略」の一環として最初に核兵器を使うという一方的な権利を主張している。


オーウェルは「安全保障」と「安定」などの言葉が好きに違いない。これらの言葉の意味は、われわれがボスで他の国は利害をわれわれの利害に一致させたほうが良い、だ。誤解が生じないように、米国はより明確な文章を作った。2000年5月に発表されたJoint Vision 2020 において米国は、すべての陸地、海上、海中、空域、宇宙空間、電波および情報システムについて独占的な権利を主張している。これは、米国に支配にたて突くいかなる国に対しても、強力な核兵器を含む現在、および将来保有する武器を使用して圧倒的な武力を行使する権利を与えるものだ。


そこに危険がある。ブッシュ政権は、1970年に米国を含む180カ国が署名した核不拡散条約(NPT)を実質的に反故にしたのだ。NPT第6章では、核保有国は核兵器廃絶に向けて「誠実に」努力することを約束するとされている。というのも核の保有、ひいては使用が地球を危機に陥れるからだ。米政府はこれを意に介さず、包括的核実験禁止条約を無視して新たな核兵器を開発しようとしている。米政府は弾道弾迎撃ミサイル制限条約や、生物・毒素兵器禁止条約も無視している。さらには、すでに多すぎる装備の増強を禁止する兵器用核分裂性物質の生産禁止条約についても考慮せず、米国以外の国をすべて合計した額よりも多額の軍事支出を行っており、さらに急拡大させるつもりであり、またその兵器の使用を制限していないのだ。


マイケル・マグワイアー元NATO企画官によれば、現在の状態は悲劇的なものとして議論すべきものだ。彼によれば、故意であれ事故であれ「核の拡散は究極的には不可避」で、遅かれ早かれテロリストまたはごろつきグループが核兵器あるいは核物質を手に入れ使用することになるだろう。ハーバードの国際関係専門家のグラハム・アリソンも2004年の著書「核テロリズム」の中で、「米国安全保障委員会のコンセンサスは、汚い爆弾(による攻撃)が不可避」であり、それには核が含まれかねず、これを防ぐにはすべての核物質を安全に確保しておく必要があるとしている。現状は、管理されていない。


これは、ノーム・コムスキーが2003年に出版した「覇権またはサバイバル」で表した不安を掻き立てる。ベネズエラのウゴ・チャベス大統領はこれをずっと賞賛し続けており、2006年の国連総会の前には情熱的なスピーチを行った。コムスキーは本の中で、彼が「現代生物学界の重鎮」と呼ぶエルンスト・マイヤーを引用し、人類の高い知性は人類が生き残る保証とはならないと指摘している。また、彼はこうも記している。甲虫やバクテリアの方が人類よりもはるかに生き残る可能性が高い。特に、「種の平均存続期間が約10万年である」ことや人類が出現してからの期間を鑑みればだ。


マイヤーは、人類が「与えられた時間」の中で、他の地球上の生命を道連れに自滅するかも知れないということを恐れている。コムスキーの観察によれば、われわれはその手段を既に持っており、それを実際に不用意に行ってしまうかも知れない。もしそうなれば、人類は自らの発明物で絶滅した唯一の種となるであろう。コムスキーはさらに2006年に著した「失敗した国」の中で、3つの大きな懸念事項を示している。「核戦争の脅威、環境面での惨事、および世界で唯一の超大国が大惨事を(不注意で)引き起こしてしまうような振る舞いをしていること」だ。


コムスキーはまた、著書の中で4つめの総合的な危険に関わる問題を提起している。彼は、「アメリカのシステム」は、アメリカが辿っている軌跡ゆえに、「平等、自由および有意義な民主主義という歴史的価値」を失っている危険があると書いている。また、彼は最新の著書「介入」で、50年前、ドワイト・アイゼンハワーの時代には、核戦争など思いもよらなかった頃にアルバート・アインシュタインとバートランド・ラッセルが言った言葉を引用している。「さて、ここに私たちがあなたがたに提出する問題、厳しく、恐しく、そして避けることのできない問題がある――私たちは人類に絶滅をもたらすか、それとも人類が戦争を放棄するか?」

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